Aave マーケットコンサルタント Lilith Li氏 – 世界トップのDeFiレンディングの取り組みを訊く(第2部)
DeFiのレンディングプロトコルであるAaveは、今やスマートコントラクト上にロックされた資産の総額は世界トップ3に入ります。今回は、Aaveのメンバーでアジア地域を担当するLilith Li氏に、Aaveの概要やv2になって便利になったことを中心に伺いました。
本記事は、全部で3部構成になっています。第2部は、主に他のレンディングプロトコルにはないAaveならではの特徴について訊いていきます。第1部がまだの方は、先に以下の記事をご覧ください。
Aave マーケットコンサルタント Lilith Li氏 インタビュー 第2部
Aaveと他のレンディングサービスとの違い
加藤:DeFiサービスは似たようなものがあまりに多く、それぞれの違いがよくわからないものです。Aaveと他のレンディングサービスとの違いはどのようになるのでしょうか?特に、Compoundが一番近いサービスだと思いますが、それと比較した場合の違いは何でしょうか?
Lilith:まず、aTokenについてです。aTokenは、正式にはAave interest bearing tokensといいます。Aaveのプールに担保を預けた時に発行され、資産を引き出す時にバーンされます。aTokenは、預け入れた資産と1:1に連動して、自由に保管や転送、取引することができます。aTokenを持っているウォレットには、利息がリアルタイムで付与されるようになっています。ちょっと分かりづらいですが、aTokenはAaveに預けた暗号資産を引き出すための引換券だと思うとイメージしやすいと思います。これは、CompoundのcTokenに似ていますね。
続いて、フラッシュローンは先程説明した通りになります。DeFi初の無担保ローンで、開発者向けの機能になります。1ブロック以内のトランザクションで、流動性がプールに返されることを条件に、担保なしで即座に暗号資産を借りることができます。もしトランザクションが完了しない場合、すべてが取り消されるようになっています。
また、AaveではSafety Module(SM)と呼ばれる保険のような仕組みを用意しています。Aaveのマネーマーケットの中で何か起きた時、例えば資金がいきなりなくなった、大量の清算が起きたという時に流動性プールの資金が不足ししてしまいます。SMはその不足分を補うための準備金を用意する仕組みです。準備金は、ユーザーがステーキングしたAAVEトークンで構成されています。
加藤:最近はDeFiのスマートコントラクトのセキュリティホールが突かれて資金が流出する事件が起きていますが、そのようなものを想定しているのですか?
Lilith:はい、SMでは準備金のうちから最大30%が補填されるようになっています。準備金のすべてが使われるわけではありません。例えば、自分が100AAVEステーキングしていて、不運にもプールの資金不足が起きてしまった場合、30AAVEが補填分として使われます。補填されるような事件がなければ、AAVEトークンをSMにステーキングしている人同士で、毎日発行される400AAVEをシェアするようになっています。
DeFiサービスのトークンは、単なるガバナンストークンの場合が多いですが、AaveではAAVEトークンをガバナンス以外の用途でも使えるようにしています。
Aaveが支持されている理由
加藤:DeFi Pulseによると、スマートコントラクト上にロックされた資産の総額(Total Value Locked: TVL)で見た場合のAaveのランキングは第2位になります(取材時点)。なぜ、そこまでAaveが支持されているのでしょうか?
Lilith:まず、Aaveには金融ライセンスがあります。2020年7月にイギリスの金融庁(FCA)からElectronic Money Institution (EMI)という名前のライセンスを取得しました。ライセンスは、FCAのページから確認することができます。EMIは、電子マネーに関するライセンスです。これでAaveは、世界中で唯一ライセンスを持っているDeFiプロジェクトになりました。
加藤:DeFiなのにライセンス持っているのですね!他にはどのような要素がありますか?
Lilith:エコシステムが洗練されています。AaveのエコシステムはAavenomicsと呼ばれています。
Lilith:Aaveは、エコシステムのためにいろいろなプランを考えています。まずは、プランを実行するにあたりトークンを移行しました。AAVEトークンは、もともとLENDという名前で、AAVEの100倍の発行数がありました。それを100:1の比率で移行し、現在の最大供給は1600万AAVEになります。1600万AAVEのうち、1300万のAAVEはユーザーが保有しています。残り300万AAVEは、Aaveエコシステムの準備金になっています。
Aaveでは、AAVEトークンを使って先程説明したSafety Module(SM)や、インセンティブを整えています。また、AAVEトークンの保有者は、コミュニティに提案して、投票で提案内容を採択するかどうか問うことができます。AAVEトークンは、単なるガバナンストークンではなく、他のDeFiプロジェクトより使いみちが多く、魅力的だと思います。
加藤:多くのDeFiプロジェクトのトークンは、単なるガバナンストークンで、大半のユーザーには保有意義が薄いように感じられますが、Aaveではガバナンス以外にもあるということなのですね。
Lilith:コミュニティが非常に盛り上がってますし、サイトが多言語に対応しています。今は日本語もあります。もちろん、安全性が第一なので、複数の監査会社を使ってコードのチェックをしてもらっています。
また、週次でレポートを出して、プロジェクトやプールの情報の透明性を高めるようにしています。他にもユーザー教育のコンテンツも出しています。AAVEトークンの保有者が単なるHODLerではなく、Aaveユーザーになるように努めています。
最後に、Aaveではチーム全体のメディア活用が積極的です。私自身はいろいろなイベントに顔を出しています。それに、CEOのStaniは有名なインフルエンサーで、たくさんの人からの共感を集めれらているのも、Aaveが支持されている理由の1つだと思います。
加藤:たしかに、Aaveがよくイベントをしているのを見かけますね。
Lilith:最後に、Aaveはとても便利です!いろいろなウォレットから直接Aaveを利用できるようになっているので、早期からのユーザーをたくさん確保できました。例えば、世界的に有名なウォレットのimTokenは、Aaveのサービスが統合されています。
第3部の予告
第2部では、Aaveならではの特徴と世界的に支持されているプロジェクトであることの理由について訊いていきました。最後となる第3部では、2020年12月にリリースされたAave v2の特徴について伺っていきます。